テニスの練習で何が一番大事なのでしょうか?
もちろん、プレイヤーのレベルによって様々な事がありますが、大方の場合、「集中して取り組む事」「目標を持って取り組む事」「あきらめずに取り組む事」・・・等と言われる方が多いのではないでしょうか?
上達するに当たって、これらの事は確かにとても大事です。特に「目標を持って取り組む事」などは、最重要だと言っても差し支えないと思いますし、実際、私も子ども達に、これらの内容についての話をします。
・・なのですが、果たして、これらの話を小学生や初心者がすんなりと理解できるでしょうか?
ミーティング等での話であれば、小学生高学年にもなれば理解してくれるでしょう。 ですが、落ち着いた状態に置かれた中で理解するという事と、「苦しさ」という要素が加わっている状態の練習の中で理解するという事は、全くの別物です。
頭では分かっていても、体が付いて行かない。気持ちが付いて行かない。
これが普通の状態です。このような状況を小学生や初心者が簡単に乗り越えられるでしょうか?
色んなことが理解できていないままであっても、彼ら彼女らなりに頑張っています。そんな中で単純な叱咤激励は、一体どれだけの力になってくれるのでしょう?
場合によっては、せっかく育ち始めていた力を奪ってしまうことになるかも知れません。
確かに、苦しいことは乗り越えて行かなければ上達はありませんが、問題は、それを乗り越えるだけのメンタル(気持ち)が育っているかどうか?という事です。
始めたばかりで目標も定めきれない人たちに、これは大事なコトだから、もっと集中して頑張れ!!と尻を叩いて、体力ギリギリの苦しい練習をさせても、一体何人の人がついて来れるでしょう?
苦しい事を乗り越えるためのメンタル(心)は、テニスが好きになっていなければ、育って来ません。そして、「テニスが好き」な気持ちを育てるのは、テニスが『楽しい』と言う感情です。
人は何かしらの情報を取り込む際に、まず最初にその情報が「好き」か「嫌い」かの振るいにかけると言います。「好き」と半断されると、集収のためのゲートは全開になりますが、そうでないと狭く閉じてしまいます。学校の勉強でも「先生が嫌い」という条件が付くだけで、ゲートが狭く閉じてしまうので、身が入らず苦痛に感じて楽しくなくなるワケです。
・・・となると、やはり最初に必要なのは、叱咤激励ではなくて、テニスは『楽しい!』と感じてもらう事だと思います。
『楽しい!』が発展して『好き!』にならなければ、『苦しい』に打ち勝って乗り越える事はできないです。
それでも、まだ前準備ができた位で、それを更に発展させて『勝ちたい!!』に繋げるには、次のステップが必要になります。
先程、「先生が嫌い」という話を書きました。これには当然「コーチ」も該当します。コーチが「嫌い」「怖い」「つまらない」などと思ってしまうと、学校の授業同様、レッスンが苦痛に感じてしまいます。苦痛になってしまっているレッスンでは、誰しも心から頑張ろうとは思わないでしょう。
そうなると、『テニスは楽しい!』と感じてもらうためには、それを教える立場のコーチ達がとても重要な役割を担う事になります。
大人の方は、生徒もコーチも、年齢差はあれど大人同士ですので、文句を言いながらでも、それなりに理解を示してくれると思いますが、子ども達は、そうは行きません。高校生になったとしても、大人と子どもの関係は消えることはありませんので、常に「従者の立場」となってしまいます。
この関係の中で、子ども達に心を開いてもらうには、やはり、コーチが子ども達の「場所」へ降りて行かなければなりません。
ある意味、コーチとしての立場が微妙なものになってしまう可能性もあるので、これは意外に難しいです。
ひょっとすると、自分の子どもを育てた事のない若いコーチほど、難しいのかも知れません。コーチの方が我慢できずに感情が表に出てしまうことがあると、子ども達は簡単に離れて行ってしまいます。
離れて行くだけなら良いのですが、最悪の場合、それでテニスを嫌いになってしまうこともあります。
周りを見ていると意外にあることなので、子ども達の人生を左右してしまう可能性のあるコーチの責任の重さは、計り知れないほどあるという事をもっと自覚するべきだと思います。
『楽しい』『好き』『強くなりたい』が揃って初めて、上に続く階段の一番下の段に足を掛け、スタートを切れたのだと思います。
そして、コーチは、そういう子ども達を上から指導する人ではなくて、励まし時には檄を飛ばしながら、これから先に待ち受ける困難な道のりを共に進む人でなくてはなりません。
そして、今はまだ拙いコーチであったとしても、選手と一緒に成長していければ、素晴らしいコーチになれると、私は思っています。
コメントはまだありません